困る前に知っておきたい! 気軽に受けることのできる弁護士のサポート

何か困ったときに、弁護士に相談する。ハードルが高く感じるかもしれませんが、ぜひ選択肢の一つとして考えていただきたいと思います。

今回の記事では、弁護士に相談したことで、被害に遭う前に食い止められた事例、被害は出してしまったがそれ以上拡大しなかった事例などを紹介します。

そもそも、どんなことであれば弁護士に相談すればいいのかがわからない、という人も多いと思います。少しでも弁護士が身近な存在となり、皆様が気軽に相談できるようになっていただければ幸いです。

どんな困り事でも弁護士に相談しよう

人に暴力を振るわれたら警察に行けばいい、体調を崩したら医者に行けばいい。でも、「こうした困り事はどこに行けばいいの?」ということもあるでしょう。

日常の困り事について、どんな相談でも、選択肢の一つに弁護士を入れてほしいと思います。弁護士が窓口になれば「このケースであればこう考えましょう」といったアドバイスができます。

弁護士は、日頃から、金銭トラブル、不動産トラブル、株等の投資トラブル、交通事故、医療事故、労務問題、SNSトラブルなど、あらゆる事件に接しており、それぞれの分野に詳しい専門家や適切な相談窓口を知っているケースも多いため、仮に相談した内容が弁護士の専門外であったとしても、「ここに相談してみてはどうか」と案内することも可能です。また、それぞれの専門的な窓口と連携・協力しながら同時並行で弁護士が動くこともあります。

例えばパワハラやセクハラは、規模の大きな会社であれば専門の部署があると思いますので、そこに相談する。加えて弁護士にも相談して、解決のために手伝ってもらうこともできます。

専門部署、組合などダイレクトな窓口や、警察といった本格的な選択肢のほかに、弁護士に相談することで、より広いアドバイスももらえます。

相談は「30分5000円(税抜き)」が相場

法律事務所に行ったことがない人も多いかもしれませんが、一般の法律事務所であれば、どこでも一般の相談を受け付けています。ただし弁護士が数百人もいるような事務所は、企業が主なクライアントです。一般市民の相談は、あまり受け付けていないでしょう。一般の相談を受け付けているかどうかは、ホームページを見れば大体わかります。

また、費用面が心配だという声も聞きます。弁護士は相談料を自由に設定できますが、明示する必要があります。ちなみに市民相談の金額は、30分で5500円(税込み)が相場です。思ったより安いと感じる人も多いのではないでしょうか。

国が設立した法の案内所である「法テラス(日本司法支援センター)」を利用して弁護士と相談すれば、初回の相談料が無料になる制度もあります。利用者の収入にかかわらず法テラスに契約している弁護士に相談すれば、法テラスが相談費用を払ってくれる仕組みです。

ただし独自の価格で相談を受けている弁護士は法テラスに登録しないことが多いため、そのような場合は、この制度は使えません。同じ事務所内でも法テラスと契約している弁護士とそうでない弁護士がいるので、注意しましょう。

自分に落ち度がある時ほど早く相談に

さて、生活の中でトラブルが起きたとき。自分が100%正しいと思えるのであれば、気持ちを強く保てます。一方で、自分にも落ち度があると感じる場合には、つけ込まれてしまうことがあります。そうしたときほど、早く弁護士に相談してください。

  1. アダルトサイトからの架空請求

    以前、70歳くらいの経営者の方が、「よくわからないうちにアダルトサイトに引っかかって変な請求をされている」と相談にいらっしゃいました。「恥ずかしくて妻にも子供にも言えない。しばらく迷っていたがやはり不安なので」とのことでしたが、詳しく話を聞いていくと、明らかな架空請求。「無視しておけば大丈夫」という結論を伝え安心してもらえました。
    相談者は社会的な立場のある人であるがゆえに、相談しづらかったのでしょう。こうしたケースでは、被害が大きくなって本人が隠し切れず、親族の方から相談されて発覚することもあります。
    弁護士に相談すれば、守秘義務によって情報が外に漏れることはありません。自分が本当に責任を負う必要があるのかを知るためだけでも、弁護士の意見を聞いたほうが安心です。

  2. 飲食店でのクレーム

    例えば、飲食店で「料理に虫が入っていた」とクレームがあったという事例があります。料理を取り換えるのは当然でしょうが、それに対しお客さんが「精神的苦痛を感じたので10万円払え」と言ってきました。お店側は「そこまでする必要があるのか」とは思いましたが、自分たちに落ち度があるし、ちょっと恐い感じの方に大声で騒がれたので払ってしまった、というケースです。
    あるいは、お店の設備が問題になったケースもあります。席と席を区切るついたてにお客さんが引っ掛かって倒れ、ケガをしてしまいました。本来店側に落ち度はなく、「自分たちは悪くない」と思っていても、「ちゃんと固定していないのが悪い」など言われてしまうと弱気になってしまいます。
    トラブルが起きたとき、お店の場合は特に「周囲に悪い評判が伝わったら困る」「大声で騒がれると厄介だ」という意識から、泣き寝入りするパターンが多いと言えます。上記の例では、いずれもお金を払うほどの落ち度があるとは言えないケースです。そのうえでもし相手が悪評を流すなら、弁護士に相談し、こちらから法的に対応することもできます。お客様相手だからと言って、泣き寝入りする必要はありません。

  3. 勝手に商品が送られてくる

    ある組織から役所の人に「同和問題の差別について勉強をしろ」と本が送り付けられてきて、代金を請求される。そうして実際に何年間も払ってしまっていた事例がありました。
    役所の職員さんたちは疑問に感じてはいましたが、問い合わせると「行政の職員として同和問題の勉強が足りていない!」と言われ、他の人に相談もしにくかったため、はっきりと断ることができずにいたそうです。
    同様の相談が多かったことからヒアリング調査をしたら、かなりの数の被害者がいました。相手の組織に「一切払わないし、今後は二度と同じことをするな。もし同じことをしたら法的に徹底して争う」といった内容証明を送ることで、継続的な被害を止めることができました。
    この事例のように物が送られてくる(ネガティブオプション)場合、「勝手に捨てたら何か言われるのではないか」と不安に思う方もいらっしゃいます。一方的に送られてきたものは、最終的には処分してかまわないのです。判断がつかない場合は、まず弁護士に聞いてみましょう。

弁護士からのメール1通で解決することも

自分のしてしまったことにつけ込まれ、相手から脅迫メールを送られてくるケースもあります。

例えば「もう捨てられた物だろう」と思って、使用していた物について、その後、持ち主が現れて「他人の物を勝手に使用するとは何事だ」と叱責され、「勝手に使用されたことによる被害が50万円、弁護士に相談して30万かかったから、80万円払ってください」
「これだけの費用がかかってます。どうするんですか、〇月〇日までに回答してください」
「回答がなければ、関係先に言いますよ」
等と言われたケースがありました。

この方は困った末に、私たちのところに相談に来られたのですが、詳細を聞いていくと、損害の程度は5万円にも満たないもので、そもそも50万円もかかるような被害ではありませんでした。弁護士費用30万円というのも、法外な金額です。そもそも弁護士の相談料は基本的に本人負担です。裁判で損害賠償が認められたとしても、弁護士費用として認められるのは、適正な損害額(一般的には被害者が主張する金額よりも少ないことが多いです)の10%程度です。今回の例で弁護士費用だけで30万なんて認められるはずがありません。

この場合、早い段階で弁護士に相談する。職場や学校にも、自分がやってしまったことを伝えたうえで「相手にお詫びも含めてきちんと交渉しています」と報告することさえできれば、怖いことはありません。

相手が脅してきても「職場に言いたければ言ってください」で終わりです。脅されるのが怖いのであれば、弁護士が代理人になって対応することもできます。こうしたケースでは弁護士からメールを1通送れば静かになることも十分にあり得ます。

もっと単純に、相談者に「そんな心配はしなくて大丈夫です」と伝え、具体的には何も対応せずにいたら、相手もそれ以上言ってこない、ということもあります。

冷静になればそれほど恐れることではないケースがほとんどです。ただし、やはり脅されれば不安になるもの。客観的に考えてもらったり、安心したりするためにも、弁護士を活用してください。

「弁護士に相談」を身近な選択肢に

本記事で紹介した場合のように、泣き寝入りする前に弁護士に相談してくれれば、解決策を見出すことができる場合があります。「確かにあなたにも落ち度はあるけれど、そこまで言われる程ではありません」、あるいは「まったく心配はいりません」と言えることもあります。

例えば公共の場で撮った写真に写りこんだ人から「肖像権の侵害だ、写真を消せ」と因縁をつけられた場合、そうしなければならないのでしょうか。最近は権利意識が強いので、「もしかしてまずいことをしてしまったのか」と思ってしまうかもしれません。

そこでそのまま相手の要求に応えるのではなく、弁護士の存在を思い出してください。相談していただければ、「撮った写真が自己使用のために電子アルバムの中に保存してあるだけなら全然問題ないですよ」「その写真を発信していた場合はこうですね」と回答できます。

いかがだったでしょうか。仮に自分に落ち度があったとしても、大事になるとは限りません。弱みに付け込んだ搾取やトラブルに巻き込まれる前に、どんな些細な問題でも相談に来ていただきたいと思います。それだけで、大部分の不安は解消されるはずです。

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